宮崎県延岡市鯛名町の海岸で6月9日、クサフグの集団産卵の観察会が開かれた。一般参加者と近くの名水小学校の児童らが見守るなか、潮が満ちた海岸で〝命〟をつなぐ営みが繰り広げられた。
クサフグはフグ目フグ科に属する魚で、背中が緑色っぽいことからこの名がついたとされる。全長10〜25センチ。背中の白い点と胸びれの後ろにある黒い点が特徴で、目が赤いことから「アカメフグ」とも呼ばれる。内臓と皮、特に肝臓、腸、卵巣は毒性が強い。
毎年4〜7月の新月や満月の日に大群で岸に押し寄せ産卵する。産卵の前には、岸近くに偵察として何匹かが現れて安全かどうかを確かめると、次第に群れの数が増え、岸近くを行き来するようになる。
潮が満潮近くになるとまず、群れの中でも少し大きいメスが岸部に産卵し、群れていた雄が産卵したところに一斉に放精するのが特徴で、波打ち際が白くにごるほどになる。
観察会は延岡市と宮崎大学農学部付属フィールド科学教育研究センター延岡フィールドが主催。公募で集まった一般参加者と名水小児童ら約20人が参加した。
この日は、午後4時前ごろから岸近くに大群が現れ、産卵場所を探しながら右に左に移動を繰り返す姿が確認された。待つこと40〜50分、メスの1匹が波打ち際に乗り上げると、回りにいた体の小さなオスが身をくねらせ、バシャバシャと水しぶきを上げながら放精を開始。それを合図に、あちこちで数十匹単位による産卵・放精の光景が繰り広げられ、周辺の水面が白く濁っていった。
卵は8〜9日でふ化するが、他の魚に食べられることが多いという。宮崎県北では日向市幸脇の「フクトが浦」が産卵場所として知られている。