6月10日は「時の記念日」。延岡市では明治11年(1878)から城山の鐘が、138年もの長きにわたって市民に時を告げてきました。その鐘に感謝するとともに、第7代鐘守の矢島茂さん(79)、征子さん(77)夫妻の労をねぎらう「城山の鐘まつり」が同日正午から、城山公園鐘つき堂で開かれました。延岡観光協会が主催して毎年開いており、今年で76回目を迎えます。
鐘まつりでは、正午ちょうどに矢島さん夫妻が鐘を12回撞いたのに続き、延岡観光協会の谷平興二代表理事が「平成12年より16年間もの長きにわたり、365日1日休むことなく延岡市民に時を知らせていただいている矢島夫妻に深く感謝申し上げます」と、ねぎらいの言葉をかけました。
さらに、谷平代表理事は2代にわたる鐘の歴史を紐解きながら、「360年の歴史の重さに敬意を払い、時空を超えた延岡市民の鐘に対する熱い思いを込め、本日の鐘まつりを開催しました。城山が延岡観光のシンボル、拠点となる日もそう遠いことではありません。城山の時告ぐる鐘が、愛してやまない延岡復活の時告ぐる鐘の音になりますよう心から願います」と抱負を述べました。
来賓を代表した首藤正治市長も「『鐘まつり』も昭和16年にスタートし、今回が76回目。鐘まつりだけでも既にそれだけ歴史を刻んでいます。この場所は、延岡の歴史そのもの。延岡の歴史のシンボルが城山であり、城山の鐘だと言っても過言ではありません。これからも私たちみんなの気持ちを込めて、この鐘の音を将来にわたって残していきたい」と話しました。
続いて、ふれあいコーラス秋桜のメンバー23人が、延岡市歌、御本城の鐘、なつかしき城山の鐘の3曲を披露。わかば幼稚園と川中保育園の園児総勢54人が、元気に時計の歌を歌って、矢島夫妻に「いつも鐘をついてくれてありがとうございます。これからも元気で頑張ってください」と感謝の言葉をかけました。
わか葉幼稚園の川越帆乃佳さん、川中保育園の犬童蒼乃さんから花束と記念品を受けた矢島夫妻は、「私たちも今年で16回目の時の記念日を迎えることになりました。時報を報せる鐘守として、今後も家内ともに健康に気を付けて頑張ります」と決意を述べました。
城山の鐘は明治11年から戦争で中断する昭和18年(1943)ごろまでは、毎日24時間、1時間ごとに鐘守が鐘をついて時を知らせてきました。東郷生まれの歌人若山牧水も「なつかしき 城山の鐘 鳴りいでぬ をさなかりし日 聞きしごとくに」「ふるさとに 帰り来りて まず聞くは かの城山の 時告ぐる鐘」の2首を残しています。
初代・鐘守は、旧藩主・内藤政擧(ないとう・まさたか)公の計らいで、稲田藤三郎さんがその任につき、以来、平成8年8月まで、稲田家が5代にわたって鐘を撞き続けました。現在の矢島さん夫妻は7代目で、平成12年から大役を務めています。今は24時間ではなくなりましたが、毎日、午前6時から午後5時までの1日6回、鐘を撞いて市民に時を報せています。