延岡で奇跡の対談が実現  のべおか国際食卓会議

延岡市の「食」の魅力を全国に発信する「のべおか国際食卓会議」が11月3日から5日まで、カルチャープラザや市庁舎周辺でありました。そのメーンとなる、日本とイタリアのミシュラン三つ星料理人2人による奇跡の対談「伝統と進化」が4日、カルチャープラザのハーモニーホールで開かれ、300人の聴衆が世界最高峰の料理人の哲学、食に対する飽くなき探究心に触れました。

対談したのは、東京・銀座で鮨店「すきやばし次郎」を経営するすし職人・小野二郎氏(92)と、2016年世界のベストレストラン50で1位になったイタリア・モデナのレストラン「オステリア・フランチェスカーナ」を経営するマッシモ・ボットゥーラ氏(55)。

小野氏はミシュラン史上最高齢の三つ星料理人で、2014年には黄綬褒章を受章しています。また、「すきやばし次郎」はアメリカのオバマ前大統領が来日した際、安部晋三首相と会食を行ったことでも知られています。

料理評論家の山本益博氏がナビゲートするなか、マッシモ氏はまず「自然より人間が創り出した創造物を私は愛しており、人間の創造性をいつも追い求めています。文学とか芸術作品に触れているとき、自分の心は感動して震え、そこから何かしらのインスピレーションを得ることができます」とアピール。

その上で、小野氏の鮨に関して「私は料理を口にする時、研究する時に心が感動して震え、その研究は未だに止めることができません。それと同じくらいに感動を与えてくれるのが、『すきばやし次郎』のカウンターに座った時。二郎さんから鮨を受け取り、口にする時、200年にわたる日本の鮨の歴史、二郎さんの職人気質、食材へのこだわりなどが伝わってきて、何か新しいものが生まれる瞬間だと確信しています」と話しました。

これに対し小野氏は、92歳になった今でも「伝統を守りながらも、もっと美味しい鮨はできないかと日々考えている」とし、昨年復活させた「あじす」を例にとりながら、「温暖化で魚の旬が違ってきているから、それに合ったやり方をしていかないと間に合わない。これからの鮨職人は大変だろう」と指摘しました。

また「鮨の割合は、酢飯が6割、上が4割。それが一番美味しい」とした上で、「一番大事なのがコハダ。そして焼いた穴子、玉子焼き、赤身のマグロ。そういう200年の歴史を持つ鮨の根本的なところはそのままに、日々改良して伸ばす努力をしています。いまだに鮨のことを夢に見ます」などと話し、その旺盛な探究心の一端を披露しました。

対談の後は、会場を市役所講堂に移し、マッシモ氏がこの日のために用意した革新的な3品の料理を参加者に振る舞いました。

メニューは、マッシモ氏の故郷が震災に見舞われた際に熟成途中で落下し商品価値がなくなったパルミジャーノチーズを有効利用し、米とチーズのみで作った「バルメジャーのチーズのリゾット」。マッシモ氏が子供時代に食べた母の手料理をヒントに、乾燥させたラザニアを揚げ、粗挽きミンチのソースに空気を含ませたベシャメルで食べる「クリスピーラザニア」。カウンターに落としたレモンタルトをヒントに失敗と成功を一皿で表現した「レモンタルト」の3品。

マッシモ氏は、リゾットにかける黒胡椒のパウダーを手に自ら各テーブルを回って参加者を接待するなど、世界一のシェフとは思えない気さくな人柄を垣間見せていました。

延岡市須崎町から参加した中村善之さん(58)は「3品とも素晴らしく、リゾットは初めての食感だったし、ラザニアは初めての味でした。特にレモンタルトは甘さと酸味が絶妙で、一番美味しくいただきました。とても贅沢な時間でした」と、笑顔で振り返りました。

リゾット

クリスピーラザニア

レモンタルト

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