延岡観光協会の創立80周年記念事業「ひむか神話講演×Super神話音楽劇」が1月29日、延岡総合文化センターで開かれました。第1部神話講演では、明治天皇の玄孫で作家の竹田恒泰さんが「神話のふるさとで学ぶ、ひとつのものがたり」と題し、「イザナギとイザナミは生まれた時から夫婦だったので、天孫ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの笠沙の岬での出逢いは、古事記の中でも初めての恋愛。延岡は日本最初のラブストーリーの地である」と強調しました。また、第2部の神話音楽劇ではドラマティック古事記特別編「出逢いの聖地 延岡」と題し、日向市出身で舞台はもとよりテレビドラマや映画などでも活躍するダンサー・西島数博さんらが、ニニギとサクヤヒメの出逢いから出産に至るストーリーを、華麗なダンスと歌、太鼓、マークエステル氏の神話絵画などを駆使し華麗に表現しました。
竹田さんは旧皇族・竹田家に生まれ、慶應義塾大学法学部卒。平成18年(2006)、『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15回山本七平賞を受賞。『現代語古事記』(学研)など神話の第一人者としても知られます。また、全国17カ所で開催す。『竹田研究会』はじめ、年間200本以上の講演を行っています。延岡での講演は、平成27年2月以来、2回目となります。
スーパー神話音楽劇「ドラマティック古事記」シリーズは、「ウルトラマセブン」や、大ヒットドラマ「傷だらけの天使」など名シナリオを世に送り出してきた脚本家の故・市川森一さんが『古事記』をテーマに原作を手がけた、演劇・ダンス・オペラとさまざまな要素が組み合わさったエンターテイメント大作です。
平成25年11月に宮崎行われた公演を皮切りに、全国で公演が行われています。今回はニニギの天孫降臨の地・高千穂、サクヤヒメと出逢い・結婚した延岡を舞台にした特別編として上演されました。西嶋さんのほか、モーニングショーの司会などで知られる女優の柴田美保子さんが語り部を務め、宮菜穂子さん(コノハナサクヤヒメ)、浅野瑞穂さん(イワナガヒメ)といった日本を代表するダンサー、和太鼓奏者の佐藤健作さんらが出演しました。
竹田さんの講演要旨は次の通りです(延岡市議・内田りささんまとめ)
日本は天皇がシラス国
神話は、神代と人の世の時代が1つにパッケージされている。日本で最初の恋愛。イザナギとイザナミ。現れた瞬間、夫婦なんです。神様の話です。
日本という国は、天皇がシラス国である。これは、天皇が日本の隅々まで知っている国だ。井上毅(こわし)という日本で頭の良い人5人に入る大日本帝国憲法をつくった方は、明治天皇からご指摘があった。日本とはどんな国か? 毅は大日本帝国は万世一系の天皇これをシラス国である…と言った。
天皇は、祈る存在だ。国民が国を支える。天皇は日本を愛する。だから日本は2000年以上続いてきたんだ。天皇と国民は親子のような関係なんだ。
天孫降臨とは、天の孫が地上に降りると書く。アマテラスの孫のニニギノミコトが地上に降りたんだ。だから、天の孫と書く。日本をシラシて来いよと大役を担って降りてきて一番最初にやったのは、ナンパです!!!
しかし、そのように見てはいけません。同盟政策をしたんです! ニニギは地上に降りてきたばかり。シラス段階になかったんです。カムヤマトイワレヒコ(神武天皇)が初代天皇です。ニニギのひ孫です。ひ孫の代でやっと統治ができた。
ニニギとサクヤヒメの結婚は同盟政策
ニニギはまず、統治するために良いとこの娘をもらったんです。ニニギは笠沙の御崎でコノハナサクヤビメと出逢って一目惚れ。一言目に何と言ったか。『あなたは誰の娘か?』普通ありえない。いきなり誰の娘かと聞くか?統治するためですよ。同盟政策なんですよ。するとコノハナサクヤビメは答えた。『オオヤマツミノカミの子です。』と。
キターーーーーーッ!!山の神様の子どもですよ!これは、トヨタの娘をもらうようなもんですよ。統治するためには、これはキターーッ!と思いますよね? ニニギはその場で『結婚してくれ!』と言いました。これは日本最初のラブストーリーなんですよ! 延岡市的には、ここ、押しましょうよ! 延岡市は、日本最初のラブストーリーの地である!と。
コノハナサクヤビメは、父上に相談します。オオヤマツミノカミは『その男はどんな人だったんだ? 』と聞きます。父は、天の孫、アマテラスの孫だと聞き、キターーーーーッ!! 嫁にイケーーーーッ! と、本人より舞い上がってしまいました。
そして、姉のイワナガヒメまで出してしまったんです。姉妹婚は昔ありましたから。美人は3日で飽きる、ブスは噛めば噛むほど味が出ると言いますが、ニニギは外観で判断し、イワナガヒメは醜いと言って、コノハナサクヤビメだけもらって帰ってしまいました。
父のオオヤマツミノカミは言霊をかけていました。イワナガヒメには、石のように永遠でありますように…と。祝いの言葉が呪いの言葉になってしまいました。
人になってしまったニニギ
神様は生きている。お宮はアマテラスのご自宅です。しかし、イワナガヒメをふったニニギは、呪いにかかり、寿命が与えられてしまったのです。神様にはお墓はありません。生きているから。しかし、ニニギにはお墓がある。つまりニニギは、人になってしまったのです。ニニギのお墓は、延岡市北川町にあります。つまりこれは、神が人になる物語なのです。天皇は神か人かと問われれば、人です。お墓があるからです。ニニギより後は、お墓があります。人です。
イワナガヒメはどうなったのか? 人生で初めて醜いと言われたイワナガヒメは、初めて鏡で自分の顔を見て、それはそれは驚き、鏡を投げてしまいました。その鏡を投げてできたのが『銀鏡(しろみ)神社』(西都市東米良)です。今でも山奥にあります。延岡からそんなに遠くない。
さて、ニニギノミコトの子どものホオリノミコト、延岡市にゆかりある方ですが、海の中の娘と結婚しました。山の次は海ですよ。統治に向かっていますね。ホオリノミコトの子ども、カムヤマトイワレヒコ(神武天皇)は、『八紘一宇』と言った。当時、戦争にあけくれていた。日本国民はみな家族なんだ。戦わず協力しよう!と呼び掛けた。天の孫のそのひ孫が言うことだからと、戦争を止めて皆が家族だとなった国民。シラスの精神。統治の中心は、南九州にあった。
日本は国民のための国家
国民のための国家だ! と日本は言いました。世界的には『国家は、国民の私物です。国王は、俺の国!』なんです。日本は、2000年以上、一度も反乱さえありません。天皇を倒せ!なんて一度もない。
東日本大震災の後、天皇陛下は心臓が悪いのに、ヘリに乗って国民のために被災地を何度も訪れた。祈る存在の国民。毎日、国民の幸せを祈っている存在の国民が災害に遇った。他人事ではないんです。天皇陛下からしたら、国民は家族なんです。だからそこには計算がないんです。避難所では、「生きててくれてありがとう。」皇后陛下も、国民を我が子のように愛しています。確実に代々受け継がれているシラスの精神。
被災者は、泣き出しました。身内がみんな死んで、生きる希望も無くなり自殺しようと考えたりした被災者が、陛下に会って、生きる望みが沸いたと言うんです。本当に私のことを愛してくれていると思ったと言うんです。私を愛してくれている人が、子の世の中にいたんだ!と思った、と。これは、『理屈じゃない。』と被災者はおっしゃっていました。
陛下は、芝居じゃなく本当に国民を愛しているから、被災者はそう感じたのです。
マッカーサの前に昭和天皇が現れた時、昭和天皇は言った。『国民は私の命令に従っただけだ。だから、私を処刑して下さい。』と。その時マッカーサは感動し、そして思いました。『日本人は家族なんだ。』と。天皇は命を投げ出してでも国民を救うんだ、と。愛する人を救うために命を投げ出すのか、と。
惜しまれながら死んでいくこと。桜も散るから美しい。もっと生きて欲しいと思われる人は、他者のために生きた人です。素晴らしい国になります。道徳の根源もそこにあるんです。