延岡市祝子町の農業、松田宗史さん(66)の畑に、江戸野菜の一つで東京・新宿で復活プロジェクトが進む「内藤とうがらし」が真っ赤な実を付け始めました。内藤とうがらしは、延岡内藤藩と始祖を同じくする信州高遠内藤藩が、江戸藩邸下屋敷(現在の新宿御苑)で栽培を始め、近郊の農村に広がり江戸の食文化を支えた伝統的な江戸野菜の一つでしたが、明治以降は姿を消していました。松田さんは「今年は試作段階で約80株が実を付けました。来年は栽培面積を1反(10アール)ぐらいに増やし、延岡ブランドの特産品にしていきたい」と張り切っています。
内藤とうがらはしは八房系という唐辛子の種類で、現在主流の「鷹の爪」ほどの辛さはなく、辛みの中に甘さを感じる中辛の風味が特徴です。実が天に向かって房状に生え、赤い実が葉の上部に頭を出します。高遠内藤藩が下屋敷の菜園で栽培を始め、一部を新宿の一角で開いた青物市場で販売したところ評判となり、唐辛子と言えば「内藤宿」とされるほどだったそうです。
新宿では、2009年から内藤とうがらしを復活させようと「内藤とうがらし普及プロジェクト」がスタートしており、“内藤藩つながり”に着目した松田さんは今年、プロジェクトのリーダーの成田重行さんを通じて5本の実を譲り受けました。
5本の実から約400粒の種が取れたことから、4月末にその種をまき、約80株を5月末に畑に定植しました。
成長したとうがらしは、1房に10個前後の実を付け、天を刺す赤色が鮮やかです。松田さんよると、1株で1反分の種が取れるそうで、軒下などで乾燥させた後、出来のいいのをより分けて来年用の種にするほか、残りは実をすり潰し一味にします。
松田さんは「食べても辛いのが分かっているのか、鳥獣の被害が全くありませんでした。家庭でもプランターなどで簡単に育てることができます。今後は栽培面積、栽培者を増やし『七万石とうがらし』というブランド名にして広げていきたい」と話しています。