• 2015.9.6

これからの季節にうれしい延岡の味  丶月の鍋焼きうどん

最初に訪れる人は必ず、市道に面した看板の字に戸惑う。「丶月」――。店名の“ちょんげつ”と正しく読める人は少ない。だが、この店こそ知る人ぞ知る「鍋焼きうどん」(650円)の名店なのである。

蒲鉾、椎茸、玉子焼き、白菜、あげみ、高野豆腐、揚げ玉……。やけどしそうなぐらい熱々の蓋を取ると、立ちこめる湯気とともにトッピングされた具材たちの大合唱が始まり、思わず迷い箸(ばし)してしまいそう。

レンゲでスープをすする。カツオ節、アジ削り節、北海道産の昆布、頭とはらわたを取り除いたイリコでだしをとり、多めの日本酒と塩などで作るつゆは、あっさりとした中にも深い味わいがある。そのつゆに、きし麺(めん)状の平たく柔らかい麺が良く絡む。

創業は昭和32年(1957)。国鉄、樺太鉄道などを経て旭化成に勤務した先代の石川正毘羅(いしかわ・まさひら)さんとサキさん夫妻(ともに故人)が、旭化成退職後に開業した。

 

もともと北海道出身で北海道の国鉄に勤務していた正毘羅さんは、開店したばかりのうどん店に食べに行った際、店主から「何かいい名前はないか」と言われ、ふと見上げたトタン屋根の穴からちょこんと月が見えていたので「丶月ではどうか」と回答。「丶月」と名付けられたその店は人気店になった。その時から「自分の店を持つ時は丶月にしよう」と決めていたそうだ。

現店主の石川具佳(いしかわ・ともよし)さん(81)が新富町から婿養子に来た昭和36年(1961)当時は、近くの旭化成の工場や寮、社宅などへの配達も多く、目が回る忙しさ。鍋焼きうどんのほかにも、チャンポン、焼きそば、親子丼、冷やし中華などメニューが多く、「近くに青果市場もあり、朝早くから夜中まで営業していた。従業員も多かった」という。特にシイタケと昆布でだしをとるチャンポンは、鍋焼きと並ぶ人気メニューだった。

鍋焼きうどん専門になったのは、平成19年(2007)に二人三脚で店を切り盛りしてきた妻・秀子さん(76)が脳梗塞(のうこうそく)で倒れてから。近くに住む娘さんたちも手伝いに来てくれるようになったが、「この年代になったら鍋焼き一本がちょうどいい。それに鍋焼きを作るコンロはいまだに14基あり、準備さえしておけば何人分でも対応可能」だからだ。

午後遅くに来店したお客さんがポツリ。「こんな鍋焼きはどこに行っても食べられない。体が続く限り作り続けて欲しいね」。常連客の思いは同じだ。

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午後遅くに来店したお客さんがポツリ。「こんな鍋焼きはどこに行っても食べられない。体が続く限り作り続けて欲しいね」。常連客の思いは同じだ。

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