九州唯一の農村歌舞伎として知られる日之影町の郷土芸能「大人(おおひと)歌舞伎」の大人神社秋季奉納公演が9月21日、同町岩井川の大人歌舞伎の館で行われ、県内外から詰めかけた約150人の観客が、会員らの熱演に喝采を送りました。主催は大人歌舞伎保存会(山本唯仁=やまもと・ただひと=会長、約29人)。
大人歌舞伎は、九州唯一の農村歌舞伎として平成7年(1995)3月、県無形民俗文化財に指定されています。歌舞伎が好きだった城主・甲斐宗攝(そうせつ)を偲び、大人地区の住民が芝居を通じて供養したのが始まりとされています。
公演は春と秋の年2回行われており、秋は10月に開催される地元・大人神社秋祭りに合わせた奉納演芸として行っていますが、今年は町議選などの影響で半月ほど早い公演となりました。
保存会員による祝いの舞「寿三番叟(さんばそう)」の後、甲斐寿文(かい・ひさふみ)大人公民館長の歓迎あいさつ、宮本卯午蔵(みやもと・うごぞう)座長による口上などに続き、幕間(まくあい)に地元住民による舞踊などを挟みながら、保存会会員が「絵本太功記 (えほんたいこうき)十段 尼ケ崎の場」、「勧進帳 安宅新関(あたかのしんせき)の場」の2本を熱演しました。


絵本太功記は江戸中期にできた歌舞伎の演目で、「尼ケ崎の場」は、明智光秀の三日天下と家族の悲劇を描いた、人気の高い名作です。主君・小田春永(織田信長)を討った武智光秀(明智光秀)が天下を握ったものの、真柴久吉(羽柴秀吉)の追討を受ける緊迫した最中を描いています。

初陣に向かう光秀の息子・十次郎と初菊の切ない別れのあと、隠れ潜んでいた光秀が、敵である久吉と誤って実の母・皐月を槍で刺殺してしまうという衝撃的な親殺しの悲劇が起こります。そこへ大けがをして瀕死の十次郎が戻ってきますが、最後まで光秀の無事を願って息絶えた十次郎の姿に、冷徹に見えた光秀が男泣きする場面が最大の見所です。

「勧進帳 安宅新関の場」は、平家追討に手柄を立てながら兄・頼朝と不仲になり都落ちした源義経(みなもとのよしつね)が、家来武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)らと逃避行を続けるなか、北陸道(ほくろくどう)安宅の関で待っていたのは関守(せきもり)富樫左衛門(とがしのさえもん)でした。主君を助けようと必死の弁慶が何も書かれていない勧進帳を読み上げる場面や、厳しく取り調べる富樫との迫力ある押し問答が見せ場です。
今回は日程が早まった影響で稽古時間が少なかったそうですが、舞台上で堂々と立ち回る役者達の姿に、観客席は笑い声があふれ、見せ場では惜しみない拍手喝采が送られました。













