宮崎県と大分県にまたがり貴重な生態系が残る「祖母・傾・大崩」など国内2エリアが、6月14日にフランス・パリで開かれた第29回ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画国際調整理事会」で、自然と人間の共生を目指す「ユネスコエコパーク」に登録されることが決まりました。エリア内にある延岡市では早速、野口記念館の壁面に登録決定を祝う横断幕、市役所前の中町通線沿いにのぼり旗が掲げられ、登録決定を祝いました。6月17日には延岡市のホテルメリージュ延岡で、エコパーク大分・宮崎推進協議会の共同代表、両県知事、関係6市町長らが出席し共同記者会見と祝賀会が開かれます。
ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的に、1976年(昭和51)にユネスコが開始した制度です。2016年3月現在で、世界120カ国699地域が登録されています。国内では屋久島、南アルプスなど7カ所が登録されており、宮崎県内でも2012年(平成24)10月に綾が登録されています。
「保存機能(生物多様性の保全)」「経済と社会の発展」「学術的研究支援」という3つの機能を果たすため、核心地域(厳格に保護する地域)、緩衝地域(教育や研修、エコツーリズムなどの実施)、移行地域(地域社会や経済発展が図られる地域)の3地域を設定。今回認定を受けた「祖母・傾・大崩」は、延岡市、日之影町、高千穂町など大分・宮崎両県の6市町にまたがり、祖母山(高千穂町)、傾山(日之影町)、九州最後の秘境といわれる大崩山(延岡市)などの名峰が点在。祖母傾国定公園や祖母傾県立自然公園に指定されています。
一帯には原生的な天然林が相当数まとまって広がり、ブナ林、モミ・ツガ林などの幅広い植生が見られるほか、特別天然記念物のニホンカモシカや環境省選定の指標昆虫のオオムラサキ、世界でここだけにしかないツチビノキなどが生息。また、急峻な山と深い渓谷が独特な景観美を醸しだし、森林セラピーなど豊かな自然を活用した取り組みも活発です。自然への畏敬の念や神楽などの民俗芸能が地域に継承されており、産業面では乾シイタケの生産など自然環境を生かした農林業が盛んです。
申請した総面積は計24万3672ヘクタール。登録認定されたことで、自然と人が共生する宮崎の魅力を国内外に発信できるほか、ほかのエコパークなどとネットワークを結ぶことができ、知名度向上や観光客の増加などが期待されます。
大分、宮崎両県とエリア内6市町は2015年(平成27)2月、登録を目指す推進協議会を設立。日本ユネスコ国内委員会は昨年8月に推薦を決定し、諮問委員会は今年5月に公表した勧告で、登録にふさわしいとの判断を示していました。国内では今回、谷川岳を含む群馬県みなかみ町などの地域が、登録認定されました。