延岡市熊野江町の熊野江神社境内で今年も、市天然記念物の「ヤッコソウ」が開花の最盛期を迎えています。開花時の形が両手を広げた姿が“奴(やっこ)さん”にそっくりなところからその名がつきました。例年より数は少な目ですが、落ち葉の間からニョッキリと顔を出した姿は何ともユニークです。
ラフレシア科の1年草で、スダジイの木の根に群れをなして生える寄生植物。国内の暖帯地方にのみ見られ、開花期は10月末から11月ごろで、3~5センチ程度の高さで地表面に群がって生え、葉緑素を持たないため全体に白色をしていて花茎の頂に花がつきます。
虫媒花で、開花の時期を迎えると花被や上部の鱗片葉(りんへんよう)と呼ばれる葉の部分から分泌液を出し、この液が発酵するにおいに昆虫が集まります。
県内では宮崎市内海のものが国の特別天然記念物に指定されていますが、自生地の規模では熊野江の方が大きいと言われています。近年の調査で、絶滅したと思われていた須美江町、島浦町でも再び自生が確認されています。
熊野江神社へは、延岡市大門町の国道10号交差点から国道388号を北浦方面に向かい約20分。熊野江トンネルの手前の交差点を左に入るとすぐ。本堂裏のスダジイの林に自生しています。
ただ、ヤッコソウは枯れ葉の下に隠れていて見落としがちなため、観察する際は十分な注意が必要です。