今月の特集!

映画「しゃぼん玉」、県北各地でロケ敢行 0982アーカイブ(2016・4月)

直木賞作家・乃南アサさんのベストセラー小説が原作で、宮崎が舞台となる映画「しゃぼん玉」のロケが、3月18日から4月上旬まで椎葉村など県北各地で行われました。「亡国のイージス」などで助監督を務め、テレビ「相棒」シリーズでは20話近く監督を務める東伸児(あずま・しんじ)さんの初監督作品。3月19日に行われた完成祈願祭と製作発表会見には、原作者の乃南さん、東監督、主演の林遣都さん、市原悦子さん、県北9市町村の首長らが出席。来春公開予定のこの映画に込めた思いなどを語ってくれました。

 

林遣都、市原悦子主演 乃南アサのベストセラー小説原作に

来春公開予定

 

血のつながり超えた絆描く感動作

 

原作は、親に見捨てられ、通り魔や強盗傷害を繰り返す無軌道な若者が、逃亡先で偶然出会った老婆や村の人々の愛情によって、なくした感情を取り戻していく様を、宮崎を舞台に描く感動作。孤独な若者と老婆の出会いを通じて、血のつながりを超えた絆を描きます。

主演の伊豆見翔人役に「荒川アンダーブリッジ」(主演)、「悪の教典」、又吉直樹原作のドラマ「火花」(主演)、NHK大河ファンタジー「精霊の守り人」など立て続けに話題作に出演し、活躍が目覚ましい若手俳優の林遣都さん。

伊豆見が逃亡先で出会う老婆・スマ役に、ドラマ「家政婦は見た!」シリーズでおなじみ、日本を代表する女優・市原悦子さん。

ある事件をきっかけに村に戻ってきた美知役には、秋公開の「デスノート2016」に出演するほか、韓国で爆発的人気の新鋭・藤井美菜さん。

また、厳しくも伊豆見を見守る村人・シゲ爺役に綿引勝彦さん、スマの息子役に相島一之さんと、日本を代表する演技派が出演します。

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椎葉村松尾の民家を舞台にロケ

 

ロケは3月18日、椎葉村松尾にあるスマの家(椎葉イトノさん邸)のロケセットでクランクイン。同日夜は延岡市出北の陸橋下地下道付近でもロケが行われました。翌19日には、スマの家でお祓いと製作発表会見が行われ、乃南さん、東監督、林さん、市原さんらが映画の無事完成を祈願しました。現地は松尾小学校から約6キロ、標高約700メートルの高地にあり、周辺の棚田や耳川を挟んで対岸に見える山々が、原作にぴったりの風景を演出しています。

今回の作品は、県北を中心にオール宮崎ロケとなることから、県北9市町村で構成する宮崎県北部広域行政事務組合(天孫降臨ひむか共和国)が特別協賛するほか、宮崎県の後援が決定。お祓いと記者会見には、内田欽也副知事、首藤正治延岡市長、地元の椎葉晃光村長ら各首長がズラリと顔を揃えました。

 

犯罪者のその後の再生描く

 

会見の中で、乃南さんは小説「しゃぼん玉」を書いた動機について、「私の初期の作品は、刑事物で犯人が捕まるところで終わりという作品が多かったのですが、だんだんと捕まった人のその後について考えるようになりました。捕まったらそこでその人の人生が終わるわけではなく、犯罪者にもいろんなタイプがいると思いますが、好きでそうなったわけではなかったり、生育環境の中で追いつめられた人もいると思います。そんな人が孤独の中でどうやったら再生できるのだろうと考えた時、伊豆見(主人公)に決定的に足りてないのは人の温もりや、故郷の存在、自然だと気づきました。故郷には土地だけでなく、自分の思いや孤独を託すことができる人そのものが故郷になるのではないかと思います。その存在こそが再生する上で一番必要だと思い、その思いを『しゃぼん玉』に託しました」と強調。

その上で、小説の取材をするため15年前に椎葉村に来た時のことを振り返り、「アポなしで飛び込んだにも関わらず、皆さん親切にしてくださった。その時にお世話になった方が、今回の映画に登場する犬の飼い主さんだと知り、すごいご縁を感じました。自分の作品がこんなに大勢の方々の力によって映画化されることに、大変感動しています」と喜びを語りました。

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全国に宮崎の魅力を発信

 

東監督は「企画立ち上げから3年、ようやく映画化できることを大変うれしく思います」と笑顔。監督自身、九州の田舎出身で、狭い世界の中で一生過ごさなければならないことに息苦しさを覚え東京に出てきたという経験を踏まえ、「小説の中で、老婆が若者を支えていく話に興味を持ちました。この小説に出合い、果たして選択肢が多いことが幸せなのだろうかと考えるようになりました。孤独な若者と、生まれた地で生き続け全てを受け入れる女性、そして自然との交流を描きたいと思っています」と抱負を述べました。

列席した内田副知事は「小説では椎葉村の人情味あふれる人たちを魅力的に描いていると感じました。高千穂郷・椎葉山地域は世界農業遺産の認定を受けたエリアでもあり、この映画によってより一層交流が進むことを願っています」、椎葉村長は「小説は椎葉の人たちの心・優しさを素晴らしい表現で書いて下っています。この映画をきっかけに全国に宮崎の魅力を発信できれば」と期待を寄せました。

 

地元の役者やエキストラも出演

 

今回の映画には、地元オーディションで選ばれた役者や、多数の地元エキストラが出演します。特にスマとともに翔人の心を癒す3人の老婆に、チエ役・濱崎けい子さん(宮崎市、演劇企画二人の会主宰)、カズエ役・大江泰子さん(宮崎市、劇団夢主宰)、道代役・中島佳江子さん(木城町、劇団ゼロQ)が扮します。

濱崎さんは「私は舞台出身ですのでつい演技してしまいがちですが、『演技するな』と言われてますので、『自然に、自然に』と心がけながら毎日、楽しくロケに臨んでいます」、大江さんは「毎日、ワクワクドキドキです。東組(東監督とそのスタッフ)は仲が良く、楽しい現場になりそうで、リラックスして臨んでいます」、中島さんも「オール宮崎ロケの映画に出演できてうれしいです。楽しんでいます」と話し、笑顔でした。

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【林遣都さんのコメント】

 

伊豆見の心の動きを繊細に表現したい

 

愛はどこからでも生まれ、人を築いていってくれる。どんなに苦しくても、大切な何かを失っても、生きてさえいて、誰かが見ていてくれれば、必ず取り戻すことができる。

原作を読み、自分自身と重ね合わせ強く感銘を受けました。自分の居場所を見つけ、愛を知り、どんどん変わっていく伊豆見の心の動きを、大事に、繊細に表現したいと思います。

 

【市原悦子さんのコメント】

 

結果がとても楽しみ

 

今までも山奥での撮影は、「黒い雨」「蕨野行」など数回ありました。共通しているのは、自然の中でありのままに生活するということです。厳しい自然の中をどう生きて、何を子孫に残していくのか。そして最後は自然の中で順番に死んでいく。

「しゃぼん玉」も人間本来の生を全うして、自然の中で自然に寄り添って生きていく……。原点に戻らされる作品だと思います。そんなことが、映画の中で青年にどう伝えることができるのか、難しいと思います。結果がとても楽しみです。

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出北1区が炊き出しなどでバックアップ  差し入れも続々

 

クランクインした3月18日夜には、延岡市の出北陸橋下の地下道周辺で大がかりなロケが行われました。そこで、地元出北1区(寺田記念生区長)の役員や福祉推進チームのメンバーら約20人が炊き出し部隊として50人分の夕食を準備するなど、ロケ現場を支えました。

北浦町の水産業者らが差し入れした食材を使い、朝からへべすブリの刺身、メヒカリの唐揚げ、チキン南蛮、野菜サラダなど延岡ならではの“おもてなし”料理を作りました。

この日は生憎の雨模様のなか、昼過ぎからポンチョや合羽姿で撮影に臨んでいたスタッフですが、夜のロケに備え午後5時過ぎから夕食会場の金重公民館に集合です。

東伸児監督は名物のチキン南蛮やメヒカリの唐揚げに箸を伸ばしながら、「寒い中、こんなに温かい料理を食べさせていただき、本当に助かります。魚もお米もとてもおいしい。延岡には初めて来ましたが、市内を流れる川、商店街など作品の舞台としてはいいサイズの画が撮れる所が多いと感じました」とお礼の言葉。

プロデューサーの浜本正機さんも「ロケは一つのお祭りが続いているようなものなので、みなさんの温かいおもてなしは必ず画にも反映されると思います。元気づけられました」と喜んでいました。

門田真幸副区長は「こうしたロケの受け入れは初めてですが、みんな楽しみにしていました。自分たちの住んでる場所の近くがスクリーンに映し出される日が楽しみです」と話していました。

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