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県境の島は「猫の楽園」だった・大分県佐伯市沖の深島  0982アーカイブ(2016・1月)

先日、2015年はペット飼育数で猫が犬を逆転しそうという記事があった。散歩や躾(しつけ)の手間から犬を飼う人が減る一方、猫の飼育数は微増を続けているとか。その表れか、来訪者が増えるなど話題になっているのが全国各地にある「猫の島」。その一つ、瀬戸内海にある「青島」(愛媛県大洲市)は、住民15人ぐらいに対し100匹以上の猫が暮らし、「猫の楽園」としてネット上で話題を集めているとか。延岡市の離島・島野浦も猫が多いが、住民(千人弱)の数を猫の数が上回るまでには至っていない。実は、青島に負けない「猫の島」が身近にあった。大分県と宮崎県の県境に浮かぶ「深島」(ふかしま)だ。大型のグレ(クロ)が狙える東九州有数の人気ポイントだが、意外にも島内は猫の“楽園”だった。

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宮崎県民には近くて、遠かった島に行って来ました!

 

深島は、大分県佐伯市蒲江大字蒲江浦の蒲江港から約9キロ南に位置する有人島。大分県では最南端にある島で、延岡市北浦町の横島展望台や島野浦の遠見場山(とんばやま)山頂からはすぐそこに見える。

周囲4キロ、面積1・1平方キロと小さく、南部と北部の2つの島が中央の砂州で結ばれたひょうたん状になっていて、集落は島の中央のくびれ部分に集中している。

全域が日豊海岸国定公園に指定され、黒潮が直接つっかけるため、磯釣り、船釣り、ルアー釣りとあらゆる釣りが可能。また、サンゴ生息の北限とされ、ダイビング、シュノーケリング、シーカヤックなどのマリンスポーツが楽しめる。

 

島民27人、猫80匹

 

島の人口は19世帯27人(2015年11月末現在)。これに対し、猫の数は推定80匹とされ、島に実際に渡ってみると、明らかに出会う人間の数よりも、寄ってくる猫の数の方が多い。

島へは、蒲江港から屋形島経由で定期船「えばあぐりいん」(18トン、定員50人)が1日3往復就航。所要時間約30分、往復運賃1350円で行ける。

深島に渡ったのは昨年の12月4日。渡船で磯場に上ったことはあるが、定期船での上陸は初体験だった。東九州自動車道の開通で、蒲江港まで約40~50分と近く、正午の便で蒲江港から深島を目指した。深島は外海にポツンと位置するため、沖がシケるなど年間の3分の1が欠航になるという。海況の安定する冬場こそ狙い目の島なのだ。

港に着くとすぐ、2匹の猫がお出迎え。猫とじゃれ合うのは後の楽しみにとっておき、まずは島内探索に出かける。神社の鳥居の前を過ぎると、こんもりと垣根状に茂ったアロエがピンク色の花をつけている。山羊もいる。白山羊さんと黒山羊さんの2匹。むしゃむしゃと草をはむ白山羊の角の立派なこと。左側には、名物の「深島かまど白みそ」を作る生産施設がある。おっと、防潮堤の上で凧のようなものが風に吹かれて揺れているぞ。何とミズイカ(アオリイカ、現地ではモイカという)の一夜干しじゃないか。お酒のつまみに最高な逸品だ。まだ昼過ぎなのに、ビールが浮かぶ。

地元の人に道を聞き、まずは島の南端にある灯台を目指す。灯台に続く集落内の坂道の両側にはすでに、猫、ネコ、ねこ…。ちょうど大分県の広瀬勝貞知事が「知事のふれあいトーク」とかで島を訪れていることもあって、東九州伊勢えび海道などで顔見知りの佐伯市役所の職員や、大分県庁南部振興局の局長・部長さんらと遭遇。餌でももらえるのか、彼らの動きに合わせるかのように、猫たちもあちこち行き交っている。よりによってにぎやかな日を選んでしまったようだ。

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灯台まで約40分

 

集落のあるくびれ部分を過ぎると、あとは山道。椎の木の枝が道上まで張りだし、昼でも薄暗いなか、ゆっくりとした勾配の道を歩く。山道の脇には沢があり、途中にかつて貯水池だった跡もあった。ようやくたどり着いた灯台からの眺めは絶景の一言。この日は風が強く、震えながら弁当を食べたが、風のない日は格好のピクニックコースになりそうだ。

灯台から戻り、いよいよ猫たちの撮影タイムだ。ひなたぼっこ中の何匹かの猫にポケットに忍ばせていたイリコをあげると、あれよあれよと数十匹の猫が集まってきた。中にはズボンに爪を立てはいのぼろうとするヤツも。棒の先に洗濯ばさみに挟んだイリコをぶら下げてみると、鋭い爪と歯で洗濯ばさみごと食べようとする。最初から最後まで執拗に追いかけてくる猫もいて、途中から少し怖くなってきた。

後で島民に聞くと、「猫への餌やりは遠慮してほしい」とのこと。「猫の口が肥え、島生活に影響を及ぼすことが懸念されるから」だそうだ。ゴメンナサイ。

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島唯一の食堂「深島食堂」

 

島には自動販売機はないが、食堂兼カフェが1軒ある。安部達也さん(35)と志賀あづみさん(27)が切り盛りする「深島食堂~shima cafe」だ。昨年8月にオープンしたばかりで、安部さんはかまど白みその製造販売、船釣り、シーカヤック、シュノーケリングなどマリンスポーツの案内、宿泊案内なども手掛け、お茶はもちろん事前に電話しておけば食事もできる。

島にある集会場が1日1組(2~8人)限定の宿泊所を兼ねており、1泊2食付き8500円(マリンスポーツ1点の無料レンタル付き)、素泊まりなら3000円でプラス1000円で簡単な食事も付けられる。集会場隣の空き家も宿泊施設として利用(1泊2500円)できる。深島食堂の前にはデッキがあり、最高のロケーションのなか夏はバーベキューが楽しめるそうだ。

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岸壁で40センチ超のグレが……

 

今度は島の南側に行ってみた。こちらにも猫の群がいる。猫たちにちょっかい出しながら長い上り坂を上り詰めた所に、蒲江小学校深島分校がある。2004年から休校状態だそうだが、運動場は比較的手入れがされていて、島唯一の広場として活用されているようだ。

午後4時半出航の帰りの船を待つ間、岸壁の消波ブロックから竿を出している人たちを見学。4年前に大阪から移住してきたというおじさんは、40センチ前後のグレを10匹ぐらい釣っていて、ビックリ。渡船代6000円を払って沖磯に渡ってもなかなか釣れないサイズだ。来るときの船で一緒になった釣り人も、強い向かい風にもかかわらず30センチ前後のグレを立て続けに釣り上げた。ただ、島の釣りにはルールがある。ツケエはオキアミでもパン粉でも構わないが、撒き餌はパン粉のみに限定されているそうだ。

深島食堂で食べさせてもらったすりみ入り味噌汁のおいしさを思い出しながら、「今度は絶対、竿持参で、泊まりに来よう」と決意した。

島での食事、宿泊、マリンスポーツに関する問い合わせは安部さんが運営する「でぃーぷまりん」(電話080・5289・2280)まで。

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【えばあぐりいん運行時刻表】

(蒲江発)→(屋形島)→(深島着)

第一便 7:30 → 7:40 → 7:58

第二便 12:00 → 12:10 → 12:28

第三便 16:00 → 16:10 → 16:28

(深島発)→(屋形島)→(蒲江着)

第一便 8:02 → 8:20 → 8:30

第二便 12:32 → 12:50 → 13:00

第三便 16:32 → 16:50 → 17:00

(気象・海象等により欠航になる場合があります。渡航前にお問い合わせください)

※この記事はひむか人マガジン「0982」2016年1月号に掲載しました。

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